診療科・各部門

外科

我々は癌の患者さんに対する治療に全力で取り組んでいます。

日本人の死亡原因の第一位は癌です。その患者さんを一人でも救うために我々は病院を挙げて取り組んでいます。当科でも胃や大腸などの消化管の癌、膵臓癌や胆管癌などの肝胆膵臓器の癌を中心に積極的な癌診療を行っています。 癌の診断に関しては、3.0テスラMRI、マルチスライスCT、PET-CTなど最新の診断装置を用いて消化器内科、放射線科などと連携し精度の高い術前診断を行っています。

癌に対する治療においては、外科的手術で癌をすべて取り除くことが最も根治的な治療と考えています。

当科では患者さんの全身状態や癌の進行具合を考慮してオーダーメイド治療を行っています。手術に関しては腹腔鏡手術を積極的に行い身体の侵襲が少なく、かつ過不足が無い手術治療の実践を日々心がけています。

手術治療を補助するものとして抗癌剤治療や、世界最高峰の定位放射線治療装置(ノバリス)による放射線治療なども組み合わせて、個々の患者さんに最適なオーダーメイド治療を提供できるように努めています。

良性疾患としては鼡径ヘルニアなどの腹部のヘルニア、胆石、痔核や痔瘻・脱肛・直腸脱といった肛門部の疾患に対しても積極的に手術を中心した治療を行っています。

また、急激に発症した腹痛症状で緊急手術などの迅速な対応が必要になる腹部疾患を急性腹症といい、頻度が高い疾患として急性虫垂炎、急性胆嚢炎、腸閉塞症や消化管穿孔などが挙げられます。当院ではこれらの疾患に対しても夜間の救急外来を含め24時間体制で対応しています。

対象疾患

食道癌、胃癌、大腸癌、肝臓癌、膵臓癌、胆道癌、乳癌など

良性疾患

胆石、ヘルニア、肛門部疾患(痔核、痔瘻、直腸脱)など

急性疾患

虫垂炎、胆嚢炎、腸閉塞症、消化管穿孔、腹部外傷など

専門外来

  • 乳腺外来

    近年、日本において乳がんにかかる女性が急増しています。しかし、早期発見・早期治療により、多くの場合は再発することなく過ごすことができるようになってきています。 当外来では、女性スタッフによるマンモグラフィ装置や超音波装置などの画像診断機器を用い、早期発見に努めております。乳房について以下のような気になる症状が見られましたら、一度受診をお勧めいたします。

    乳房に「しこり」が触れる

    乳房に「痛み」を感じる

    乳頭から分泌物が出る

乳房の検査について
検査

内容

問診・視診・触診

患者さんのこれまでの経緯や、家族歴などをお聞きした後、皮膚や乳頭に異常がないか、左右対称かどうかなどをチェックします。

マンモグラフィ検査

乳房専用のレントゲン装置です。触診では診断できない小さなしこりや、しこりになる前の石灰化した微細な乳がんの発見に威力を発揮します。しかし、妊娠している方には適しておりません。

超音波検査

胸にゼリー状の液体を塗り、探触子(プローブ)を乳房にあて、超音波により乳房のしこりが良性か悪性かを調べる検査です。被曝のおそれがないため、妊娠中の方も安心して検査を受けられます。

その他

細胞診など、組織を取り出して腫瘍そのものの病理的診断を行う場合があります。

対象疾患

当外来では問診をはじめ、さまざまな検査を用いて病態を判断します。乳腺には意外と良性疾患が多く、自己判断ではその区別がつきにくい場合がほとんどです。
乳房に何らかの症状を感じたら、まずは当外来にて専門医にご相談ください。

疾患名

概要

乳がん

乳房の中にある乳腺(母乳をつくるところ)にできる悪性腫瘍です。乳腺組織の一部の細胞の遺伝子が、さまざまな要因を積み重ねて変異し、がん細胞となって増殖したものが乳がんとされています。

乳腺症

エストロゲンとプロゲステロンの分泌のアンバランスにより、乳腺の細胞にいろいろな変化が起こる症状です。30~40代に多く見られ、乳房内にしこりができたり、乳腺の一部がむくんだり、水がたまったり、痛みや張りを感じたりします。乳頭から分泌物が出ることもあります。痛みの強いときだけ治療の対象となります。

乳腺炎

細菌感染によって起こる乳房の病気で、赤く腫れたり、痛みや膿み、しこりなどが見られます。特に、授乳期に母乳が乳房内にうっ滞して炎症を起こすうっ滞性乳腺炎が多く、乳頭から細菌が進入すると化膿性乳腺炎となって膿みが出るようになります。乳頭にできた傷から細菌感染が起こることもあります。

線維腺腫

乳房の良性腫瘍で、10代後半から30代の人に多く起こります。ころころとした硬いしこりで、触ってみるとよく動きます。画像検査や針生検で線維腺腫と診断されれば、特別な治療は必要ありません。しこりが急速に大きくなる場合、局所麻酔で切除することもあります。

乳頭内乳頭腫

乳頭の近くの乳管内にできる良性の腫瘍で、乳頭からの出血や血液の混じった分泌物が出たりします。がんとの鑑別のために腫瘍を切除することもあります。

葉状腫瘍ようじょうしゅよう

20~30代の人に比較的多く見られる、ころころとしたしこりです。最初は線維腺腫に似ていますが、2~3か月で急に大きくなります。葉状腫瘍には良性と悪性、どちらともいえないボーダーライン上のものがありますが、ほとんどは良性です。悪性と診断されると乳房切除が必要です。葉状腫瘍の95%が治癒しますが、少数ながら遠隔転移することもあります。また、良性でも再発を繰り返すうちに悪性になることもあるので、葉状腫瘍は注意深く経過を見ることが必要です。

乳がん検診について

当院は乳がんの検診実施医療機関です。
お住まいの役所・役場より検診の受診券などが届いた場合、そちらをご利用いただけます。
わからないことがありましたら、下記までお気軽にお問い合わせください

当院では医薬分業を推進し、原則として院外処方せんを発行しています。ご都合の良い保険薬局でお薬をお求めください。

  • お問い合わせ

    電話番号:076-252-2101(代) 外科受付まで

    診察日:月曜~金曜午前(11時まで受付) 水曜午後(2時~4時まで受付)

  • ヘルニア外来

    当院では以前より鼠径ヘルニアに対する治療を積極的に行ってきましたが、2012年9月よりヘルニア外来を開設し、更に力を入れて治療に取り組んでいます。

鼠径ヘルニアについて

『鼠径部』は足の付け根の部分のことを指し『ヘルニア』は体の組織が正しい位置からはみ出した状態のことをいいます。
『鼠径ヘルニア』は本来ならばお腹の中にあるべき腸や腹膜の一部が鼠径部の筋膜の隙間など(ヘルニア門)から皮膚の下に出てくる病気で、一般に『脱腸』と呼ばれる病気です。
ヘルニア門の場所により図1の様に分類されます。

鼠径ヘルニアの症状

立位時やお腹に力を入れた時などに鼠径部の皮膚の下にお腹の中の組織が脱出して柔らかい腫れを触れますが普通は指で押さえると引っ込みます。また鼠径部の違和感や不快感も伴うことがあります。
腫れが急に硬くなったり押さえても引っ込まなくなり、腹痛や腹部膨満、嘔吐を伴うことがあります。これをヘルニア嵌頓(かんとん)といい(図2)急いで手術をしなければ命に関わる状態です。

鼠径ヘルニアに対する診察

症状の経過等を詳しく問診した後に腹部の診察を行います。患者さんにお腹の力を入れていただいたり、立位の状態で鼠径部の膨らみ部分を触診してヘルニアの状態を調べます。場合によっては超音波やCT等の検査を行うこともあります。

鼠径ヘルニアの治療法

鼠径ヘルニアに対しては手術以外に治療方法がありません。最近は痛みも少なく短期入院で済む新しい手術方法が普及しており、当院でも導入しています。生活の質等を考慮すると、積極的に治療をした方が良いと思われます。

【当院で行っている鼠径ヘルニアに対する手術方法】

ポリプロピレン製のメッシュという人工補強材による鼠径部腹壁の補強を行います。ヘルニア分類の3か所の内、原因部位を含めた全てをカバー出来るため、将来的な再発の可能性を低く抑えることが出来ます。

  1. 腹腔鏡下鼠径ヘルニア根治術

    全身麻酔が可能な場合は原則として腹腔鏡手術を行います。腹腔鏡手術は、お腹の中に腹腔鏡と呼ばれる内視鏡を挿入し、映し出された画像を見ながら開腹せずに手術をする方法です。腹腔鏡と手術器具を挿入するための小さな孔(臍部に1cm、左右側腹部に5mmずつの計3つの孔)で手術を行います。
    ご希望により臍部2cmの孔から内視鏡、手術器具を挿入して手術を行う単孔式手術も選択できます。腹腔内から腹膜前腔という筋膜下、腹膜直上のスペースにメッシュを留置します。

    ~腹腔鏡手術の優れた点~

    傷が小さく痛みが少ない

    前方からのアプローチによる手術法に比べ傷が小さいため手術後の傷の痛みが少なく、早期離床が可能で入院期間も短縮されます。

    診断が確実

    腹腔内から観察するとヘルニアの状態が確実に診断できます。術前にはっきりしなかった反対側のヘルニアを診断することも出来ます。両側の鼠径ヘルニアに対しても同じ傷で同時に手術をすることが可能です。

    ~腹腔鏡手術の問題点~

    全身麻酔が必ず必要

    前方からのアプローチによる手術と比較すると費用がやや高い

    腹腔鏡操作特有の合併症が生じる可能性がある

    腹部手術の既往があり癒着がある場合や腹水が貯留している場合等は手術が困難

    当院では平成7年に腹腔鏡下鼠径ヘルニア根治術を導入しています。経験豊富な医師が複数で手術を担当し合併症減少に努力していますので安心して手術を受けていただけます。

  2. 前方アプローチによる鼠径ヘルニア根治術

    鼠径部の皮膚を切開し鼠径管を開放してヘルニアを修復する方法です。
    全身麻酔が不可能である方や、腹部手術の既往などがあり腹腔鏡手術が困難な場合に適応となります。4~5cm長の皮膚切開した創にて手術を行い前方からのアプローチで腹膜前腔へメッシュを留置します。

    なお、上記どの手術術式が選択されても、傷は基本的に吸収される糸が用いられ皮下埋没縫合で閉鎖されますので抜糸の必要がありません。

手術後の経過

手術後2日目以後に退院が可能となります。自宅での生活に自信が持てない場合は遠慮なくご相談ください。退院後は一度外来再診にて、傷の観察や術後経過の確認等に関する診察を受けていただきます。

~退院後の生活について~

日常生活:自宅での生活は特に制限する必要はありません。入浴も普通に入っていただいて構いません。

仕事:事務仕事は差し支えありません。重い物を持つ等お腹に力が加わるような仕事には、術後1か月ほどは避けた方が良いと思われます。

スポーツ:激しいスポーツに関しては、術後1か月ほどは避けた方が良いでしょう。

食事:手術による影響はありません。通常の食事で構いません。

鼠径ヘルニアは非常に一般的な病気ですが初期の頃は症状も軽く、病院を受診しない患者さんが多数いらっしゃいます。病状が進行すると日常生活に支障をもたらすだけでなく嵌頓(かんとん)という命に関わる状態になることもあります。
上記「鼠径ヘルニアの症状」の出現等、この病気が疑われる場合は、当院ヘルニア外来を受診し担当医に相談していただくことをお勧めいたします。

専門医制度と連携したデータベース事業への協力

一般社団法人 National Clinical Database のデータベース事業


浅ノ川総合病院 NCD

病院医療の崩壊や医師の偏在が叫ばれ、多くの学会や団体が医療再建に向けて新たな提言を行っていますが、どのような場所でどのような医療が行われているかが把握されていない状況では、患者さん目線の良質な医療は提供できません。そこで日本では、関連する多くの臨床学会が連携し、我が国の医療の現状を把握するため、『一般社団法人National Clinical Database』(以下、NCD)を立ち上げ、データベース事業を開始することになりました。この法人における事業を通じて、患者さんにより適切な医療を提供するための専門医の適正配置が検討できるだけでなく、最善の医療を提供するための各臨床現場の取り組みを支援することが可能となります。