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浅ノ川病院グループ
医療法人社団浅ノ川

浅ノ川総合病院

076-252-2101

〒920-8621 石川県金沢市小坂町中83番地
てんかんセンター

てんかんセンター

てんかんの罹病率は総人口の約1%であり、北陸3県では約3万人が罹患していると推定できます。このように患者数が多い疾患にもかかわらず、北陸地域においてはてんかん学に精通した医師を擁する医療機関が極めて少ないのが現状です。当センターは、てんかんの専門的診断から外科的治療まで実施できる北陸3県では唯一の医療機関です。

てんかんセンター 受診案内

てんかんセンター外来を受診するには、通院している医療機関からの診療情報提供書と受診予約が必要です。

担当医

神経内科 廣瀬源二郎(日本てんかん学会認定専門医・指導医)
月・水・木曜日 9:15-12:30

センター構成員

氏名 診療科 所属 備考
廣瀬 源二郎 神経内科 浅ノ川総合病院 神経内科
   〃    てんかんセンター
   〃    脳神経センター
顧問
センター長
センター長
黒田 文人 小児科 金沢大学 連携機関
佐藤 仁志 小児科 金沢医科大学 連携機関
三邊 義雄 精神科 金沢大学 連携機関
川崎 康宏 精神科 金沢医科大学 連携機関

日本のてんかん患者数

 先進国において全人口の0.8-1%のてんかん患者が存在すると推定されています。日本においては全国規模での年齢別の有病率の統計がないため、アイスランドの統計を使って我が国の年齢別てんかん患者数を算定すると次のようになります(図1、人口は2012年時点)。
日本の年齢別てんかん患者数の推定
図1:日本の年齢別てんかん患者数の推定
総数で約100万人の患者数になります。てんかんというと小児科の病気と思っている人がいますが、実は小児科の対象から外れる15歳以上のてんかん患者数は、小児の患者数の10倍以上も存在します。そして高齢化社会が進行する我が国においては、高齢のてんかん患者が増加しています。

てんかんの定義

 まず、てんかんという病気を特徴づける「てんかん発作」とはどういうものなのでしょうか。国際抗てんかん連盟(ILAE)によるてんかん発作の定義では、「異常に過度の、あるいは同期した脳の神経活動を原因とする徴候・症状が一過性に起こること」(Epilepsia 2005; 46: 470-672)となっています。脳は神経細胞の興奮と抑制がうまく調和を保つことで、さまざまな働きをすることができます。この調和が乱れて過剰な興奮や抑制が起きたり、神経細胞群が一斉に同じ活動をしてしまったりすると、脳は正常に働かなくなります。このような脳の一時的な異常によって起こる現象がてんかん発作です。なお、第三者が客観的に認識できる現象が「徴候sign」、患者自身が主観的に認識する現象(第三者は認識できない)が「症状symptom」です。では、てんかんという病気はどのように表現されているのでしょうか。ILAEが2005年に発表したてんかんの定義は次のようになっています。
てんかん発作を生じる永続的な素因と、この病的状態がもたらす神経生物学的、認知的、心理学的、社会的影響によって特徴づけられる脳の障害。
てんかんの定義には少なくとも1回のてんかん発作が起こることを必要とする。

(Epilepsia 2005; 46: 470-672)

つまり、てんかんというのはてんかん発作を繰り返す慢性の脳の病気であり、てんかんと診断するには少なくとも1回はてんかん発作を起こしている必要があります。更にてんかん発作を起こすことから、患者の神経・精神心理面や社会面にもさまざまな影響が及んでいるということです。この定義によっててんかんというのは単にてんかん発作を起こすだけの単純な病気ではないということはわかりますが、この定義は実際の診断にはあまり役立ちません。これはあくまでも概念上の定義です。そこで2014年に実際に診断に役立つ実用上の定義が発表されました。
  1. 少なくとも2回の非誘発(又は反射)発作が24時間以上を隔てて起こる
  2. 1回の非誘発(又は反射)発作があり、更にその後10年にわたって発作が起こる確率が、2回の非誘発発作後の一般的な再発危険度(少なくとも60%)に等しい
  3. てんかん症候群と診断できる

(Epilepsia 2014; 55: 475-482)

まずてんかんと診断できるのは、24時間を隔てて発作が2回起こった場合です。「非誘発」というのは発作を起こす一時的な要因(例えば発熱、脳震盪、薬物の影響など)がないということです。「反射発作」とはある決まった外界からの刺激(例えば光の点滅)にさらされると起こる発作です。なぜ2回なのか?その理由は初回発作が起こった場合に次の発作が5年以内に起こる確率は約30%なのに対して、2回あるいは3回の発作が起こった場合に4年以内に次の発作が起こる確率は70%を超えるという研究による証拠(エビデンス)があるからです。つぎにてんかんと診断できるのは、1回の発作が起こった場合に2回目の発作が起こる確率が60%以上だとわかる場合です。脳出血や脳梗塞といった脳卒中、脳挫傷といった脳の外傷、脳膿瘍といった脳の感染症が既往にある人が発作を起こした場合は、次の発作が起こる確率は60%を超えるというエビデンスがありますから、その場合には1回の発作だけでもてんかんと診断できます。更に初発発作後に、検査結果などからてんかんの中のどういう病名なのかが判明した場合には、当然てんかんと診断できることになります。

てんかん発作

 てんかん発作というと、「全身をけいれんさせて泡をふく」というものを想像する人が多いのですが、てんかん発作はそればかりではありません。まず、てんかん発作は2つに大別されます。1つは全般性発作で、発作の開始と同時に両側大脳半球があっという間に発作波に巻き込まれる発作です。もう1つは焦点性発作(部分発作ともいいます)で、大脳の一部にだけ発作が起こるものです。発作の徴候や症状は発作波に巻き込まれる脳の部位によってさまざまです。なお、発作が焦点性発作で始まっても、発作波が両側大脳半球全体に拡がれば、最終的には全般性強直間代発作に発展してしまいます。この現象を二次性全般化といいます。てんかん発作は次のように分類されています。
A 全般性発作(両側大脳半球が急速に発作に巻き込まれる)
強直間代発作
欠神発作
 定型欠神発作
 (脳波は左右同期性の3Hz棘徐波複合のバースト)
 非定型欠神発作
 (脳波は2.5Hz以下の棘徐波複合、低振幅速波、他)
 特徴的な欠神発作:
 ミオクロニー欠神発作, 眼瞼ミオクロニー
ミオクロニー発作
 ミオクロニー発作
 (てんかん性の瞬間的な不随意的筋収縮、ピクツキ)
 ミオクロニー脱力発作
 (ミオクローヌスとほぼ同時に四肢・体幹筋の無緊張)
 ミオクロニー強直発作
 (ミオクローヌスとほぼ同時に四肢・体幹筋の緊張)
間代発作
強直発作
脱力発作
B 焦点性発作(部分発作)(大脳の限局した領域に発作がとどまる)
C 原因不明の発作
てんかん性スパスム(両上肢・体幹の一瞬の硬直)

(Epilepsia 2010; 51: 676-685 )

てんかん発作の状況を表現するときに「前兆」という用語を用いることがあります。この「前兆」とは実は焦点性発作そのものです。発作がまだ初期の段階で発作に巻き込まれている脳の領域が限局している場合に感じる症状を前兆といいます。前兆によっては発作が起きている脳の領域を推定できるものがあります(表1)。
前兆 症状原性領域
片側体性感覚性前兆 対側1次体性感覚野
両側体性感覚性前兆 2次体性感覚野
補足感覚運動野
単純な聴覚性前兆 Heschl回(上側頭回の一部)
複雑な幻聴 側頭葉連合野
単純な片側視野の
視覚性前兆
対側の視覚皮質
(Brodmann area 17,18)
複雑な視覚性前兆 後頭葉・側頭葉の連合皮質
恐怖 扁桃体
幻臭 扁桃体
上腹部不快感 島回
デジャブdéjà vu 側頭葉底部
表1:前兆から症状を出している脳の領域(症状原性領域)が推定できる
(「Oxford Textbook of Epilepsy and Epileptic Seizures」 2013, Oxford Univ. Press, 一部改変)

てんかん発作と非てんかん性発作

てんかん発作かそうでないかを見極めることは非常に重要です。

一過性意識消失の最もありふれた原因への簡単なアプローチ
図2:一過性意識消失の最もありふれた原因への簡単なアプローチ

(Oxford Textbook of Epilepsy and Epileptic Seizures, 2013, 一部改変)


てんかんでない人をてんかんと診断してしまうことは、その逆よりも身体的・精神的そして社会的ダメージが大きいかもしれません。
 一過性の意識消失と聞くとすぐに「てんかん」を連想する人がいるかもしれませんが、一過性の意識消失を起こす原因には様々なものがあります。その原因へのアプローチは図2のように考えるとわかりやすいでしょう。児童が集会で立っている状態で顔面蒼白になって倒れた(ごく短い時間で痙攣することもあります)とか、年配の男性が立って排尿していたところ倒れたとかの現象は、すぐにてんかん発作ではなく一過性の血圧低下による失神だとわかります。しかしてんかん発作との鑑別がときに困難な発作もあります。その代表が心因性非てんかん性発作です。この発作は「偽発作」とか「ヒステリー発作」とよばれることがありましたが、これらは不適切な用語です。表2に鑑別点を示します。最も信頼のおける鑑別点は発作のときに眼を開けているか閉じているかです。
てんかん発作では開眼、心因性発作では閉眼していることが非常に多いのです。
表2 一過性意識消失を起こす最も頻度が高い原因疾患の鑑別点
(Oxford Textbook of Epilepsy and Epileptic Seizures, 2013, 一部改変)
観察項目 全般性強直間代発作 心因性非てんかん性発作 (PNES)
緩徐な開始 焦点性の始まりはありうる(前兆) まれではない(しばしば数分持続)
運動性の活動 典型的な発作パターン(強直、間代、強直間代) 突然の休止を伴うが一定の周期を示す身体をくねらせる動きがよくある
非同期生の腕や脚の動き めずらしい よくある
合目的な動き 非常にまれ ときどき
律動的な骨盤の動き まれ ときどき
後弓反張 非常にまれ ときどき
遷延する発作性脱力 非常にまれ ときどき
皮膚 チアノーゼがよくある 長時間持続してもチアノーゼなし
発作時に泣く 非常にまれ ときどき
閉眼 まれ 非常によくある
開眼への抵抗 非常にまれ よくある
瞳孔反射の維持 しばしば消失 非常によくある
発作時の反応性 まれ ときに一部保たれている
発作時の失禁 まれではない まれではない
2分を超える発作の持続 めったにない よくある
発作後の見当識回復 たいてい分単位 しばしば意外に早かったり遅かったり
咬舌 まれではない(舌側方) ときどき(舌先端)
外傷 よくある(火傷) よくある
夜間の発作(from 'sleep') よくある まれではない

てんかん症候群

 ただ「てんかん」といわれただけでは診断されたことになりません。これでは「あなたは癌にかかっています」とだけ言われたのと同じことです。体のどこの部位の何という癌なのかがわからなくては、どこをどう治療してよいのかわかりません。ところが、ただ「てんかん」とだけいわれて、長い年月にわたって薬を飲まされていることが稀ではありません。「てんかん」とはいろいろな病気の集まりのいわば総称ですから、個々のケースに対してはてんかんの中の何という病気かを診断しなければ、適切な治療法が決まりませんし、今後どうなるかという見通しも立ちません。
 ある患者のグループにおいて、発作の様子、発作を起こしていないときの症状、脳波や画像検査の所見がある程度共通していれば、このグループは同じ病気にかかっている可能性が高いといえます。そこで病気の原因などが全てわからなくても、とりあえずグループの病名を付けておくと便利です。このような病名は「症候群」名です。一方、病気の全容が解明されている病気には「疾患」名が付きます。てんかんにはさまざまな症候群や疾患がありますが、ただそれを羅列するだけではわかりにくく、実際に診断を考えるときに不便です。そこで、分類という作業をして、数多くの病気を整理しておくと便利です。
図3は1989年に国際抗てんかん連盟(ILAE)によって提唱された分類の概略です。この分類では、てんかんを原因から「特発性」と「症候性」に、発作型から「局在関連」(焦点性と同じ意味)と「全般」に大きく4つに分類しています。
1989年に提唱されたてんかんおよびてんかん症候群の分類
図3 1989年に提唱されたてんかんおよび
てんかん症候群の分類

 特発性てんかんとは、遺伝性の素因が原因となったもので、いわば生まれもった脳の性質によるてんかんです。特発性てんかんに属する病気はそれぞれ発症年齢がだいたい決まっているのが特徴です。症候性てんかんとは、脳の器質性病変つまり画像検査で目に見える脳の異常が原因となったものです。
 症候群診断が決まると治療法が決まりますし、これからどうなるかという予後が推測できます。特発性局在関連てんかんのほとんどの患者は、ある年齢に達すると自然に発作がなくなってしまいます。特発性全般てんかんでは抗てんかん薬がよく効くため、約80%の患者で発作は寛解します。一方、症候性局在関連てんかんでは、抗てんかん薬で発作を良好に抑制できる患者は50%程度です。症候性全般てんかんは、てんかん性脳症ともよばれ、どのような抗てんかん薬を用いても発作が消失することは少なく、ほとんどはてんかん発作以外に知能や運動機能の発達障害を伴います。
 この1989年の分類は最終的な病名が決まらなくても4つの大分類のどれに入るかがわかれば治療方針が立ち、更に患者に予後を説明できるという点で便利なものでした。しかし提唱されてから四半世紀が経過してその間にてんかん学も進歩して、この分類法では具合が悪いことも出てきたため、2010年にILAEが新しい分類案を提唱しました。しかし新しい分類ではこれまでの4つの大分類が排除されたため、最終的な病名までたどり着けないと「てんかん」としかいえなくなりました。つまり新しい分類案は、速やかに治療法を決定し予後について患者に説明するための「道具」の役割を果たさなくなってしまいました(Epilepsy Research 2006; 70 (supple): 27-33)。現時点ではてんかん学の見地から誰もが納得し、かつ医療現場で便利に使える分類はありません。表3は新旧分類の折衷案の一例です。

表3. 1989年と2010年の症候群分類の折衷案
(Renzo Guerrini. Lancet 2006; 367:499-524, 一部改変)
大分類 症候群 発症 予後 第1選択薬
特発性焦点性
てんかん
a)良性乳児てんかん 乳児期 良好 PB
b)中心・側頭部に棘波を伴う良性小児てんかん 3-13歳 良好 CBZ
c)Panayiotopoulos症候群 2-8歳 良好 CBZ
d)遅発性小児後頭葉てんかん(Gastaut型) 6-17歳 良好 CBZ
症候性焦点性
てんかん
辺縁系てんかん
a)海馬硬化症を伴う内側側頭葉てんかん 学童期 不定 CBZ
b)他の部位と原因で規定されるてんかん さまざま 不定 CBZ
新皮質てんかん
c)Rasmussen症候群 6-12歳 不良 タクロリムス,
免疫グロブリン
d)片側痙攣-片麻痺症候群 1-5歳 不良 CBZ
e)他の部位と原因で規定されるてんかん さまざま 不定 CBZ
f)早期乳児遊走性部分てんかん 乳児期 不良 PB
特発性全般
てんかん
a)乳児良性ミオクロニーてんかん 3M-3歳 不定 VPA
b)小児欠神てんかん 5-6歳 良好 VPA
c)若年欠神てんかん 10-12歳 良好 VPA
d)若年ミオクロニーてんかん 12-18歳 良好 VPA
e)全般強直間代発作のみを示すてんかん 12-18歳 良好 VPA
f)ミオクロニー脱力発作を伴うてんかん 3-5歳 不定 VPA
g)ミオクロニー欠神発作を伴うてんかん 1-12歳 不定 VPA
てんかん性脳症 a)早期ミオクロニー脳症  新生児期 不良 steroids
b)大田原症候群 乳児早期 不良 steroids
c)West症候群 乳児期 不定 steroids
d)Dravet症候群 乳児期 不良 stiripentol
e)Lennox-Gastaut症候群 3-10歳 不良 VPA
f)Landau-Kleffner症候群 3-6歳 不定 VPA
g)睡眠時持続性棘徐波を示すてんかん性脳症 4-7歳 不定 VPA
家族性
(常染色体優性)
てんかん
a)良性家族性新生児/乳児けいれん  新生・乳児期 良好 PB
b)家族性外側側頭葉てんかん 小児・思春期 不定 CBZ
c)常染色体優性家族性夜間前頭葉てんかん 小児期 不定 CBZ
d)熱性けいれんプラス 小児・思春期 不定 VPA
反射てんかん a)特発性光感受性後頭葉てんかん 10-12歳 不定 VPA
その他、視覚感受性てんかん 2-5歳 不定 VPA
b)視覚以外の刺激によるてんかん発作 さまざま 不定 VPA, CBZ
進行性
ミオクローヌス
てんかん
a)Sialidosis  思春期 不良 VPA, TPM
b)Lafora病 6-19歳 不良 VPA, TPM
c)Gaucher病 不定 不良 VPA, TPM
d)Ceroid Lipofuscinosis  乳児-成人 不良 VPA, TPM
e)赤色ぼろ線維ミトコンドリア脳症(MERRF) 10歳以降 不良 VPA, TPM
f)Unverrichit-Lundborg病 10歳前後 不良 VPA, TPM
g)歯状核・赤核・淡蒼球・ルイ体萎縮症(DRPLA) 20歳以下 不良 VPA, TPM
てんかんの診断を要しない発作 a)熱性痙攣 3-5歳 良好
b)良性新生児発作 新生児期 良好
c)孤発発作/孤発てんかん重積状態 さまざま
d)薬物ないし他の化学物質による誘発発作 さまざま
予後不定:良いことも悪いこともある
CBZカルバマゼピン、PBフェノバルビタール、TPMトピラマート、VPAバルプロ酸ナトリウム

てんかんの診断

 問診の際に患者や家族からもたらされる情報はとても重要であり、その情報が診断の決め手になることもあります。初めて医療機関を受診する際には、次のような事柄をなるべく正確かつ簡潔に医師に伝えることが重要です。

 表4. 問診の際に医師に伝えるべき事柄
・初めての発作: 日時、年齢
・発作の様子: 前兆はあるか
発作の状態(動きを伴う発作の場合には左右の違いが重要)
・発作の持続時間
・発作後の様子
・発作はいつ起こりやすいか?:
眠いとき、睡眠中、朝起きがけなど
・発作の誘因:
発熱、睡眠不足、生理、光刺激など
・治療歴: 抗発作薬の種類と量
・発作の頻度
・最終の発作はいつか?
・既往歴:
妊娠・出産時にトラブルはなかったかも含めて熱性痙攣の有無
・知能や運動機能の発達の状況、学業成績
・血縁者にてんかんと診断された人がいるか?
・利き手:幼少時に矯正したことはないか?

 てんかんを診断するための検査には、ビデオ-脳波モニタリング(図4、5)、MRI(図6)、PET(図7)やSPECTといった核医学検査、神経心理学的検査などがあります。なかでも重要なのが、発作時の患者の様子と脳波とを同時に記録できるビデオ-脳波モニタリングです。てんかんの発作診断と症候群診断のためには、発作時の現象を正確に把握することが最も重要です。たとえ患者本人やそばにいる人が認識できない小さな発作や睡眠中の発作でも、モニタリングによって捉えることができます。また、ビデオ-脳波モニタリングは心因性非てんかん性発作の診断でも有用です。
 てんかんを治すための外科的な治療ができる可能性は十分にあるが、てんかん発作の発生源を頭皮電極による脳波では確定できない場合には、手術によって脳の表面や脳内に電極を設置してビデオ-脳波モニタリングをすることがあります(図8)。

ビデオ-脳波モニタリングの光景
図4 ビデオ-脳波モニタリングの光景(イメージ画像)

個室に脳波装置とビデオカメラが設置されている。検査中はなるべくベッド上ですごすことが望ましいが、電極箱(矢印)の接続をはずせば自由に動くことができる。

ビデオ-脳波の画面
図5 ビデオ-脳波の画面(イメージ画像)

発作時の患者の様子と脳波を同時に観察することができる。

3テスラMR画像
図6 3テスラMR画像(脳冠状断)

矢印で示したものが左の海馬で、右側に比べて小さい。この症例は左海馬硬化症を伴った左内側側頭葉てんかん。

FDG-PET画像
図7 FDG-PET画像(脳冠状断)

発作を起こしていないときの左内側側頭葉てんかん。矢印が示す領域は対側と比べて暖色が乏しく、この領域は機能が低下していることを表す。

頭蓋内電極
図8a 頭蓋内電極
頭蓋内電極設置後のX線側面像
図8b 頭蓋内電極設置後のX線側面像

てんかんの薬物療法

 てんかんの症候群診断が確定したら全てのケースで薬物治療が開始されるわけではありません。例えば中心・側頭部に棘波を伴う良性小児てんかん患者の大多数では発作頻度が低く(年に数回)、また発作は睡眠中に起こるため経過観察だけとなることもあります。
てんかんに用いる薬は「抗てんかん薬」とよばれています。この用語から「てんかんそのものを治す薬」という印象を受けますが、残念ながら現在なおてんかんを治す薬あるいはてんかんの発症を抑える薬は存在しません。全ての薬剤は発作を抑制するものであり、病気自体を治すものではありません。したがって「抗発作薬」とよぶ方がより的確かもしれません。 抗発作薬はてんかん症候群におけるてんかん発作の型によって選択されます。原則として、全般性発作にはバルプロ酸、焦点性発作にはカルバマゼピンがまず使用されるべき薬剤です(表4)。

表4 発作型による抗発作薬の選択(NICE clinical guideline 2012, UKを改変)
発作型 第1選択 併用 使用しない
(発作が増悪する可能性)
全般性強直間代発作 VPA CLB, LTG, LEV
TPM, VPA
(欠神発作やミオクローヌスを伴う場合、あるいは若年ミオクロニーてんかんが疑われる場合)
CBZ, GBP, PHT
強直発作、脱力発作 VPA LTG CBZ, GBP
欠神発作 ESM, VPA ESM, LTG, VPA CBZ, GBP, PHT
ミオクローヌス VPA LEV, TPM, VPA CBZ, GBP, PHT
焦点性発作 CBZ CBZ, CLB, GBP
LTG, LEV, TPM
VPA

CLB: クロバザム、CBZ:カルバマゼピン, ESM: エトスクシミド, GBP: ガバペンチン
LTG:ラモトリギン, LEV: レベチラセタム, PHT: フェニトイン, TPM: トピラマート, VPA: バルプロ酸

 ここで注意しなくてはいけないことは、発作型あるいは症候群診断を間違えて不適切な抗発作薬を投与すると、増悪してしまう発作があることです。例えばミオクローヌスを起こす全般てんかんにカルバマゼピンやフェニトインを使用してしまうと、発作が増悪してしまいます。
 治療の原則は、できるかぎり少ない種類の薬剤を、必要最小限の量で投与することです。単一の薬剤では効果が不十分な場合には、複数の薬剤を投与することがあります。薬物療法を継続する場合、薬剤の発作抑制効果と副作用とのバランスに注意を払う必要があります。また小児の場合には、薬剤の学習能力への影響などに配慮する必要があります。全てんかん患者の約70%では、薬剤で発作を十分にコントロールできます(図3)。ところがどんな薬剤を用いても、発作を十分にコントロールできないてんかんがあります。薬剤抵抗性てんかんとは、2種類の適切かつ服用を継続できる抗発作薬による治療をしても発作が消失しないてんかんです。このような薬剤抵抗性のてんかん患者は全てんかん患者の30%、日本には約30万人存在すると推定できます。

てんかん患者の予後
図3 てんかん患者の予後
(Epilepsy Res 2011; 96 :225–30)

妊娠可能年齢の女性

 ある種のてんかんには遺伝性がありますが、大多数のてんかんには遺伝性がありません。まずてんかんについて正しい診断を受けて、遺伝性について正しく理解することが重要です。男女に関わらず抗発作薬を服用していても、結婚して健康な子供を授かっている人がたくさんいます。しかし女性の場合、抗発作薬の種類や投与量によっては胎児の奇形発現率を高めたり、子供の知能発達に悪影響を及ぼしたりする場合があります。例えばバルプロ酸を一日に1000mg未満服用している妊婦の奇形発現率は4%程度で、薬を服用していない場合とほとんど変わりませんし、生まれた子供の知能発達にも影響がありません。ところが1日の服用量が1000mgを超えると、奇形発現率は50%近くに跳ね上がり、子供の知能発達にも悪影響が及びます。ただし、胎児への薬の影響が怖いからといってむやみに薬をやめることはできません。母親が全身性のけいれんを起こす可能性が高い場合には、抗発作薬が胎児に与える影響より、けいれんが胎児に与える影響の方がはるかに危険だからです。妊娠から出産に至るまでの投薬計画や注意事項については、妊娠する前にてんかんに精通した医師に相談することを勧めます。

てんかんの手術適応

 薬剤抵抗性てんかんに対してはなすすべがないのかというと、そうではありません。薬剤抵抗性てんかん患者の約10%、日本ではおよそ3万人の患者は、外科的治療によって発作が消失する可能性があります。手術の適応となるてんかんには次のようなものがあります。
  1. 内側側頭葉てんかん
  2. 限局性病変によるてんかん
  3. 一側大脳半球のびまん性病変
  4. 転倒発作を起こすてんかん
  5. 視床下部過誤腫によるてんかん

では手術は薬剤抵抗性てんかんと判明するまで控えるべきかというと、それは適切な判断ではありません。なぜなら病気によっては進行性のもの、時間経過とともに発作や脳の機能が悪化するものがあるからです。このような病気では手術が遅れれば手術で期待できる成績(発作がなくなる可能性)も悪くなってしまいます。また小児の重篤なてんかんの場合では、発作を起こしている期間が長ければ長いほど、手術をしてたとえ発作がなくなったとしても術後の精神・神経的な発達が悪くなってしまいます。更に発作がある状態では溺水、転落や交通事故といった事故の危険にさらされることになり、身体に危害がおよびます。発作自体による予期せぬ突然死(Sudden Unexpected Death in Epilepsy: SUDEP)も起こりえます。ですから手術が可能と判明すれば、いたずらに抗発作薬をあれこれ試すよりも速やかに手術を決断すべきです。

てんかん手術

 てんかん外科には大きく分けて2つの手術方法があります。1つは、てんかん発作を起こす脳の領域を完全に切除あるいは周囲と遮断することによって、発作が起こらないようにする根治手術です。この種の手術には脳葉切除術、皮質焦点切除術、病巣切除術や機能的大脳半球離断術などがあります。もう1つは、発作波が脳に拡がるのを緩和することにより、重篤な発作が起こらないようにする緩和手術です。この種の手術として脳梁離断術や軟膜下皮質多切術(Multiple Subpial Transection, MST)などがあります。発作によって急激に倒れるため外傷が絶えないようなてんかんでは、左右の大脳の連絡路である脳梁を切断する脳梁離断術が有効です。また、脳手術以外の方法として、手術により左頸部迷走神経に電極を装着し、前胸部皮下に留置した装置で間欠的に電気刺激する迷走神経刺激療法というものがあります(後述)。
 表5はてんかん手術の成績に関する研究の結果を統計学的に統合した(メタ解析)ものです。

表5 てんかん手術の発作コントロールに関する長期成績
(平均/中央値≧5年)

メタ解析(Brain 2005; 128: 1188 – 1198)

手術タイプ(研究数) 患者数 %発作消失 (95% CI)
側頭葉 (40) 3895 66 (62 – 70)
側頭葉外 (2) 169 34 (28 – 40)
前頭葉 (7) 486 27 (23 – 30)
頭頂葉 (1) 82 46 (35 – 57)
後頭葉 (1) 35 46 (29 – 63)
脳梁離断 (3) 99 35 (26 – 44)*
MST (2) 74 16 (8 – 24)
* 転倒発作の消失率
この表からわかることは、側頭葉てんかんは患者数と研究数が他のてんかんより圧倒的に多く、かつ手術による発作消失率が最も高いことです。側頭葉以外の部位の手術では、発作消失率は50%を下回ってしまいます。側頭葉てんかん患者の大多数は、発作がなければ健康な人と何ら変わらない社会生活を送ることができるのです。したがって側頭葉てんかん、特に側頭葉の内側にある記憶の働きをする海馬の異常(海馬硬化症)が原因である内側側頭葉てんかんは、手術によって発作が消失する可能性がとても高いため、診断されれば速やかに手術を受けるべきだと考えます。

内側側頭葉てんかん

 このてんかんの発作は、海馬などが存在する側頭葉内側部から始まります。発作の前兆として、喉にこみあげてくるような上腹部の不快感(小児では「お腹が痛い」と訴えることがあります)、意識が遠のく感じ、恐怖感、幻覚などを自覚することがあります。前兆に続いて、動作が止まってぼんやりして正しい応答がなくなります。口や手に一定の動作(自動症)が見られることがあります。発作後もしばらくぼんやりしていたり、混乱して無理に動こうとしたりします。本人は発作時のことを覚えていません。側頭葉てんかんは抗発作薬が効かないことが多く、思春期を過ぎた頃から病状が悪くなり、患者の精神機能や社会生活にも悪影響をおよぼします。手術は側頭葉切除術あるいは選択的扁桃体海馬切除術を行います。てんかんの原因となっている側頭葉を切除しても、大きな後遺症はありません。
 表6は側頭葉てんかんの手術成績です。典型的な海馬硬化症を伴う内側側頭葉てんかんであれば、発作消失率は90%近くにも達します。

表6 側頭葉てんかん手術の成績
筆頭著者 発表年 経過観察期間
(年)
患者数 意識減損を伴う発作の消失
Engel's class I (%)
Radhakrishnan 1998 >2 (mean 4) 175 77
Bien 2001 >2 (mean 5) 148 62
Jutila 2002 >1 (mean 5) 140 56
Alpherts 2004 6 71 68
Spencer 2005 >2 (median 5) 297 68
Cohen-Gadol 2006 >0.5 (mean 6) 372 79
Al-Kaylani 2007 >2 (mean 6) 150 70
Asztely 2007 >8 (mean 12) 51 65
Tanriverdi 2008 5 100 64
Elsharkawy 2009 5 434 71
Ramos 2009 2 105 85
Elliott 2013 >2 (mean 7) 116 89
 では側頭葉てんかんの手術にはどれくらいの危険が伴うかというと、手術を要するような重篤な合併症(深部におよぶ感染など)が起こる確率が1.5%、神経症状が永久に残る確率が4.1%、精神症状(幻覚や妄想など)が永久に残る確率が1.9%という研究報告があります(Epilepsia 2013; 54: 840-847)。

てんかんの脳外科手術をするのに頭髪はどうするか?

 脳外科手術と聞いて気になることは頭髪の問題です。当院ではどのようなてんかん手術でも、皮膚の切開線に沿って幅1cm程度の頭髪を短く刈るだけです(図9)。手術終了後、全身麻酔がかかった状態で洗髪して血液などをきれいに洗い流します。この方法で術後に創部の感染を起こしたことはありません。術後の容態に問題がなければ、手術翌日から食事をすることも歩くこともできますし、シャワーを浴びて洗髪することもできます。
部分剃毛による左側頭葉てんかん手術
図9 部分剃毛による左側頭葉てんかん手術
皮膚切開線(左耳の前から前額部生え際まで)の両側約1cm幅の頭髪を切るだけ。

迷走神経刺激療法(Vagal Nerve Stimulation, VNS)

 どのような薬を選択しても発作が十分に抑制されず、また脳外科手術をするのも難しい場合でも治療法の選択肢は残されています。頚部の迷走神経を間欠的に刺激することで、さまざまなてんかん発作が軽減することがあるのです(図10)。この治療法は2010年に日本で保険適応となりました。表7のように約50%の患者で発作が50%以上減少します。一方、約25%の患者では発作頻度が変わりません。しかしVNSによって発作が増悪することはありません。刺激の強度や頻度など刺激条件は体外から調節できます。患者自身が刺激の開始や停止を自由にすることもできます。
Cyberonics, Inc
Cyberonics, Inc

図10 迷走神経刺激療法 左頚部迷走神経に電極、左前胸部に刺激装置

表7 迷走神経刺激療法 VNSの手術成績(J Neurosurgery 2011; 115: 1248-1255)
Engel Class, %発作減少
I, 100% II, >90% III, 50-90% IV, <50% Total
患者数 (%) 121 (4.6) 200 (7.6) 1012 (38.4) 1301 (49.4) 2634

てんかん外科の現状

 日本において、外科治療によって発作が改善する可能性のある患者は5万人存在すると推定されています。しかし、日本脳神経外科学会の調査によると、実際に行われている手術は年間僅か600件程度です。このような状況の背景には、てんかん外科の有効性と安全性が世間一般によく理解されていないことが考えられます。また、てんかんの外科適応を正しく判断できる医師や、てんかん外科を専門とする医師が少ないこともてんかん外科が普及しない一因です。

てんかん患者の自動車の運転

 全てのてんかん患者が自動車を運転してはいけないのではありません。発作のコントロールの状態によっては、自動車の運転が許可されます。道路交通法の運用基準によると、自動車運転免許を取得あるいは更新するためには、次の条件のいずれかであると医師に診断されなくてはいけません。
  1. 過去に5年以上発作がなく、今後発作が起こるおそれがない。
  2. 発作が過去2年以内に起こったことがなく、今後X年であれば発作がおこるおそれがない(Xは主治医が記載)注)。
  3. 1年の経過観察後、発作が意識障害及び運動障害を伴わない単純部分発作に限られ、今後、症状の悪化のおそれがない。ただし、運転に支障をきたす発作が過去2年以内に起こったことがないのが前提である。
  4. 2年の経過観察後、発作が睡眠中に限って起こり、今後、症状の悪化のおそれがない。
注)日本てんかん学会の見解ではX年は2-3年が望ましいとのこと

 つまり2年間、目が覚めているときに運転に支障をおよぼすような意識や運動が障害されるてんかん発作がなければ、運転免許を取得できる可能性があるということです。
 発作コントロールが不十分なてんかん患者が病気を申告せずに運転免許の更新を繰り返し、発作によって事故を起こして多数の死傷者を出す事件が起きてしまいました。このような悲惨な事件が契機となって道路交通法が改正され、安全な自動車運転に支障をおよぼすおそれがある一定の病気(てんかんは含まれます)にかかっている人を的確に把握するための質問票の提出が義務化されました(2014年6月1日施行)。てんかんに関係する質問は次のようなものです。
次の項目について、「はい」又は「いいえ」で回答します。
  1. 過去5年以内において、病気(病気の治療に伴う症状を含みます)を原因として、又は原因は明らかでないが、意識を失ったことがある。
  2. 過去5年以内において、病気を原因として、身体の全部又は一部が一時的に思いどおりに動かせなくなったことがある。
  3. 病気を理由として、医師から運転免許の取得又は運転を控えるよう助言を受けている。

 これらの質問には正しく答えなくてはいけません。虚偽の記載をした場合には1年以下の懲役又は30万円以下の罰金が科せられます。
 どれかの質問に「はい」と回答しても、直ちに運転免許が拒否されたり取り消しされたりすることはありません。運転免許の可否は医師の診断を参考に判断されます。たとえ運転免許が取り消しになっても、取消日から3年以内に2年間運転に支障をおよぼすようなてんかん発作がなければ、技能試験や学科試験を受けることなく(新たに自動車教習所に通う必要はありません)、簡単な適性試験だけで免許の再取得ができます。
 自動車の運転に支障をおよぼすてんかん発作が起こるおそれがある状態で自動車を運転し、事故を起こして人を死傷させた場合には15年以下の懲役が科せられます
(自動車の運転により人を死傷させる行為等の処罰に関する法律、2014年5月20日施行)。
 自動車運転免許についてわからないことがあれば、各都道府県の運転適正相談窓口で相談することを勧めます。

てんかんと診断された人が利用できる社会資源

 日本にはてんかん患者が受けることのできる多くの公的支援事業がありますが、当事者がそれを知らないで申請しなければ恩恵を受けることができません。
 てんかんは日本の法制度上「精神障害」と分類され、てんかんと診断された人は障害者総合支援法に基づく福祉サービスや医療費の公費負担、就労支援、障害年金などさまざまな支援(社会資源)を受けることができます。ここでは知らないと経済的に損をする社会資源を3つ紹介します。
 1) 自立支援医療: てんかんに関係する健康保険適応の外来通院費(入院費は適用されません)の公費負担制度で、自己負担金は原則10%になります。都道府県別の診断書を通院している医療機関で作成してもらい、市区町村役場に申請します。なお所得によって自己負担上限額が制限されることがあります。自治体によっては独自の医療費助成制度を設けていることがあります。
 2) 精神障害者保健福祉手帳: この手帳を取得することにより自治体独自の福祉サービス、税制の優遇措置、携帯電話料金の割引などさまざまな支援を受けることができます。手帳申請に必要な所定の診断書は診療科を問わず主治医が作成することができます。申請書類は市区町村役場に提出します。この手帳は所定の条件を満たしていれば身体障害者手帳や療養手帳と重複して取得することが可能です
 3) 障害年金: 障害基礎年金、障害厚生年金、障害共済年金の3種類があります。所定の診断書を通院している医療機関に作成してもらい、市区町村役場(場合によっては最寄りの年金事務所)に申請します。
 精神障害者保険福祉手帳や障害年金が認められるためのおよその基準を表8に示します。てんかん発作の条件を満たしていなくても、合併している知的障害や精神障害が重篤な場合には認定されます。
表8 「精神障害者保健福祉手帳」あるいは「障害年金」の障害認定基準
障害の程度 障害の状態
1級 十分な治療にかかわらず、A又はBが月に1回以上あり、かつ常時の介護を要する
2級 十分な治療にかかわらず、A又はBが年に2回以上、若しくはC又はDが月1回以上あり、かつ日常生活が著しい制限を受ける
3級 十分な治療にかかわらず、A又はBが年に2回未満、若しくはC又はDが月1回未満あり、かつ日常生活若しくは社会生活(労働)が制限を受ける
発作のタイプ
  A:意識障害を呈し、状況にそぐわない行為を示す発作
  B:意識障害の有無を問わず、転倒する発作
  C:意識を失い、行為が途絶するが、倒れない発作
  D:意識障害はないが、随意運動が失われる発作

てんかんからの回復

 国際抗てんかん連盟(ILAE)はてんかんが「回復したresolved」と判断できる条件を2014年に発表しました。これまでは「てんかん」と診断されると、この診断名を抹消する基準がなかったのですが、これからはこの基準にしたがって患者を「てんかん」という病名から開放することができるようになりました。
年齢依存性てんかんの患者が該当年齢を過ぎた、あるいは10年にわたって発作がなく、最近5年間は抗発作薬の服用がない

てんかん治療の目標

 てんかん治療の目標はてんかん発作を止めることではありません。目標はてんかん患者の生活の質(Quality of Life, QOL)の改善にあります。薬物療法によって発作が消失しても、薬剤の副作用、例えば眠気や倦怠感、認知機能の低下に苦しんで満足な日常生活ができなければQOLは改善しません。てんかん患者のQOLはてんかん発作を起こすことばかりでなく、薬の副作用、うつ状態や不安な気分それに社会的偏見などさまざまな要因によって低下しています。ですからてんかんを治療するには、発作を抑制することばかり考えるのでなくQOLの改善をめざして、必要ならばいろいろな専門家と連携して治療を進める必要があります。
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