訪問看護ステーション 看護師 T.Mさん(配属2年目)
訪問看護では病棟勤務での経験やスキルは十分に活かせていますが、利用者の自宅等に1人で訪問するため、ケアで悩んだ時は病棟のように相談するスタッフがいません。また、医療機器や検査をして画像や数値という客観的データで判断が出来ないため、フィジカルアセスメント(※1)の重要性を痛感しています。
在宅では病院と違い限られた物や環境でのケアが求められます。例えば、家族に体位変換(※2)や除圧等の方法は説明しますが、体位変換を終日、2、3時間毎にして下さいとは指導はしません。家族は日常生活を営みながら介護をしている為、疲労度や家族が出来るケア能力を考慮し指導します。利用者や家族の能力を見極めるスキル、限られた環境で工夫し柔軟性のあるケア力を高めていきたいと思っています。
当ステーションは朝や午後の情報共有の時間以外にも利用者やその家族の話題が会話の中心で悩みが相談しやすく、より良いケアがしたいと看護師、リハビリスタッフで話し合っています。そのような風土で働ける事がモチベーションの維持に繋がっています。
あさのがわ訪問リハビリ・訪問看護ステーションを利用して良かったと思ってもらえるように頑張っていきたいと思います。
(※1)フィジカルアセスメント:問診・視診等で患者さんの身体の状態を観察したり評価したりすること。
(※2)体位変換:ベッドなどと接触しているために体重で圧迫されている身体の部位を、姿勢などを変えることによって移動させること
8:30 ~ 8:45 利用者の情報共有やケアについての話し合い
9:00 ~ 10:00 訪問
10:30 ~ 11:30 訪問
12:00 ステーションに戻り記録、午前の訪問の報告
12:30 ~ 13:30 休憩
14:00 ~ 14:30 訪問
15:00 ~ 16:00 訪問
16:15 ステーションに戻り記録、午後の報告
*移動の合間にスマートフォンで記録をすることもあり
緩和ケアの研修に参加した時に、訪問看護師が活き活きと訪問看護が楽しいと話していた事で訪問看護に興味を持ちました。
緩和ケアやがん看護のスキルアップの為に学習し経験をしていく中で、現状の医療システムでは在院日数が短くなり、疼痛コントロールや化学療法の有害事象に対して在宅でフォローしてもらえる医療者がいたら安心して患者や家族に退院してもらえると思っていました。在宅ケアの重要性を実感し在宅を支える訪問看護師になりたいと本格的に考えるようになりました。
病棟と違い、訪問している時間は利用者と家族の為だけに使える事や、自宅でケアするので利用者や家族と距離感が近くなったと思える時です。
また、訪問看護ステーションは訪問をやりたいと集まってきたスタッフなので、少しずつ考え方は違いますが向いている方向は一緒だと思える事です。
がんで独居の利用者の看取りを経験しました。独身、遠方の出身で家族とは疎遠の為、サポートする人がいませんでした。ほぼ布団上の生活でしたがトイレや簡単な調理、入浴はできていました。訪問診療を受け、買い物や掃除等のサービスをヘルパーがサポート、看護師は心身の状態の観察と症状緩和を主に介入していました。鎮痛剤の副作用で薬の自己中断を繰り返し症状緩和が難しく、医師や薬剤師、看護師をなかなか信頼してもらえませんでした。不安や不満等の負の感情を訴えると穏やかな表情になり自身の人生を語り、心を開いてくれたと感じても、次の訪問時には直ぐに帰って欲しいという態度を示されることもありました。
訪問時に浴槽内で意識消失しているという事もありました。氷しか食べられず、トイレまで動けなくなった状態で緊急訪問の連絡があり、結果、訪問中に心肺停止となりました。利用者は施設入所や入院した方が良いのではと揺れている時もありましたが、亡くなった後に着る服も整えてあり、どのような思いで準備をしたのだろうかと思うと切なくなりました。
状態が悪化した際には訪問回数を増やす提案をしていましたが、受け入れられませんでした。他者に頼ることが少なく自律して生きてきた人なのだと理解できましたが、担当看護師を中心にスタッフみんなで悩みながらケアしていました。しかし振り返ると、その人はステーションでの話題の中心でスタッフみんなが気にかけていたのです。そして気にかけていたのはケアマネジャーやヘルパーも同様で、頻繁に連絡を取りながらサポートしていました。
家族がいなくても気にかけてくれる人がいることで在宅でも看取りは実現出来るのだと実感しています。「病院」で、「在宅」でと決めつけるのではなく、その人が居場所のあると思える場の提供を整えていけたらと思います。
在宅緩和ケアが強みのステーションに成長を目指したいです。